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節電に最も効果のある地中熱ヒートポンプ
平成24年7月24日
 
節電に最も効果のある地中熱ヒートポンプ
NPO法人 地中熱利用促進協会

   原発事故以降の電力不足の中で、今年も節電への対応に苦しい取り組みをされているのではないでしょうか。節電・省エネをお考えの皆様に地中熱を利用した節電法についてご紹介します。

 毎年、夏の午後のピーク電力への対応が、節電においては最も切実な問題です。夏の暑い時期にこれ以上の節電というと、あとは快適性を犠牲にして冷房を切ったりするしかないと思われている方も多いと思います。しかし、その選択肢は熱中症のリスクを抱えていますし、そこまで行かなくとも作業能率の低下という問題が残ります。

 自然界には意外に身近なところに冷たい場所(冷熱源)があります。皆様の足下にある地中の温度は年間通して一定しており、ほぼその地域の年平均気温と同じです。この地中にある熱(地中熱)は、夏は冷熱源として、冬は温熱源として利用できます(図1)。















 地中熱を利用した  エアコン(地中熱ヒートポンプ:図2)を使うと、通常の空冷エアコン(空気熱源ヒートポンプ)に比較して格段に少ないエネルギーで冷房ができます。その原理を簡単に説明します。熱は温度の高いところから低いところに向かって流れます。従って、空冷エアコンで室内の排熱をするためには、室外機から放熱する際の 温度を、外気温より高くする必要があります。その状況は、エアコンの室外機からの熱風を体感された方にはご理解いただけると思います。特に夏の暑い日は放熱のために、より多くの電力が使われることになります。一方、地中熱ヒートポンプでの放熱先の地中は、夏は冷えていますので、たやすく熱が逃げてくれ、少ないエネルギーで室内の排熱が可能になります。地中熱ヒートポンプは空冷エアコンより格段に少ない電力で冷房ができるのです。
 この仕組みから、特に夏に多くの電力を消費する酷暑日ほど、地中熱ヒートポンプの節電効果が大きくなることを理解していただけると思います。冬の暖房も同じです。冬季には逆に地中の温度が気温より高くなっていますので、地中熱ヒートポンプによる暖房が効率的にできます。昨年は節電で石油ストーブが売れましたが、化石燃料の消費は地球温暖化対策だけでなく貿易収支の面からも問題です。地中熱のような国産の熱エネルギーを使っての節電が望ましい姿だと思います。
 業務用の地中熱ヒートポンプと空冷エアコンの実績値を比較してみると、空調を地中熱にした場合、少なく見積もっても消費電力は3分の1程度削減できる見込みです(図3)。また、地中熱利用は、冷房排熱を外気に放熱しませんのでヒー トアイランド対策にも効果的です。外気が高温にならない分だけ、冷房の電力消費を抑えることができますので、これも節電に加算されます。日本地熱学会では地中熱利用が普及した際のヒートアイランド現象抑制効果も考慮すると、空冷エアコン利用時と比べ、冷房時の消費電力は半分程度になると試算しています。
 それでは、地中熱ヒートポンプの導入により、夏の電力のピークカットにどの程度の貢献ができるでしょうか。東電管内の業務用空調について見ると、夏の冷房需要が1,000万kWあります(図4)。地中熱ヒートポンプの導入による電力削減に、ヒートアイランド抑制効果による電力削減を加え半分が削減できるとすると、東電管内の業務用だけでも500万kW程度の節電効果になるものと考えられます。これに家庭用の空調も考慮し全国規模で予測してみると、東電の電力供給は全国の約3割ですので、日本全体では地中熱ヒートポンプの導入による節電効果は1,000万kWを大きく超える規模になるものと推定されます。
 そうはいっても、地中熱の利用はまだわずかです。これは認知度が低いこともさることながら、初期コストが割高であることが普及の障壁となっています。地中熱利用による省エネ効果で、ランニングコストは大幅に削減できますので、長期にわたって利用すれば初期投資は回収できるわけですが、その回収年数が10年以下になってい る設備はまだ少ないのが現状です。しかし、2010年に地中熱は再生可能エネルギーとして国に認知され、国からの助成が受けられるようになりました。経済産業省による再生可能エネルギー熱利用の助成事業や、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス推進事業等では、地中熱ヒートポンプへの導入支援の補助金があります。新エネルギー導入促進協議会、環境共創イニシアチブが、2012年度の助成事業の窓口となっています。このほか、地域によっては地方公共団体からの助成も受けられます。
 地中熱ヒートポンプは、今年5月に開業した東京スカイツリーでも、高効率な冷暖房システムの中で活用されています。ここ数年全国的に地中熱ヒートポンプの導入が増えてきています。これから地中熱利用の普及が進展すれば、再生可能エネルギーの熱利用分だけ、発電所の設備容量を削減することが可能になります。節電・省エネの有力な手段ですので、新築や設備更新の際に是非地中熱の利用をご検討ください。

節電に最も効果のある地中熱ヒートポンプ (pdf版資料:235kB)
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