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Geo-Heat Promotion Association of Japan

協会からの提言

地中熱普及拡大 中長期ロードマップ

地中熱利用促進協会では、地中熱普及拡大に向けた中長期ロードマップを作成いたしました。

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 地中熱は地表近くにある再生可能エネルギーで、日本国中どこでも利用できる。市街地に限ってみても膨大な量の導入ポテンシャルがあるが、まだそのほとんどが未利用のままである。欧米諸国では1970年代の石油危機以降に石油代替エネルギーとして地中熱の利用が始まったが、日本ではエネルギー政策に地中熱が取り上げられたのは、2010年のエネルギー基本計画が初めてである。しかし、その後はエネルギー政策、環境政策、住宅・建築物の政策に次々に取り上げられ、導入支援の補助金に後押しされて地中熱ヒートポンプの設置件数は毎年着実に伸びている。

地中熱ヒートポンプは冷暖房、給湯、融雪のほかプールや温泉の加温、施設園芸、工場での冷温水など多方面で利用されている。地中熱ヒートポンプは、従来型の設備に比べて省エネ性が高く、CO2排出量の削減効果が大きいことから、将来性の高い再生可能エネルギーの一つである。また、他にない特徴として、冷房廃熱が地中に吸収されることからヒートアイランド対策に有効であると言われている。

これからのわが国のエネルギー事情を展望するにあたり、政府による2030年のエネルギーミックスでは、再生可能エネルギー全体として原油換算で6700万kLの利用が見込まれている。また、パリ協定のもとでわが国では2030年までに2013年度比で26%の温室効果ガスの削減を約束している。地中熱利用がこれらの目標にどの程度貢献できるものか、地中熱利用促進協会では先行する世界各国の地中熱の導入状況と日本の地中熱のポテンシャルを考慮し、2030年代に実現可能な地中熱ヒートポンプの導入量を算定するとともに、それを実現するために必要なプロセスを示す中長期ロードマップを作成した。

このロードマップでは2030年代の地中熱の導入目標として、エネルギーミックスにおける再生可能エネルギー熱利用の導入見込み量1341万kLの10%に相当する134万kLを掲げている。これにより年間100万tのCO2の削減が可能となる。これを実現するために必要な地中熱ヒートポンプの設備容量はおよそ1000万kWとなり、設置件数に換算すると16万件になる。地中熱のポテンシャルは全国に600万~1600万kLあるといわれているので、導入目標としている134万kLを十分賄えるポテンシャルを有している。また、設備容量の1000万kWという数字も、2015年時点で先行する米国が1680万kW、中国が1178万kWの設備容量を有していると報告されていることから、取組方次第で実現可能なものということができる。

2030年代にこの目標を実現するための一里塚として、当面目指すべき2020年の目標も設定した。現在、経済産業省、環境省の補助制度があるので、この制度を最大限活用することが求められる。また、コストの20%低減を目標とした技術開発がNEDOにより実施されており、プロジェクトが終了する2018年度以降、コスト低減による市場の活性化が期待できる。さらに、省エネ基準の適合義務化が拡大していく中で、1次エネルギー消費量が算定できる地中熱ヒートポンプの評価法の整備が進められており、非住宅(2016年適用開始)から住宅へと範囲を広げ2018年ころまでに評価法が整うことも、普及にとっての大きなプラス要因となる。自治体の取り組みも進んでおり、地中熱を環境政策の中に位置づけ、庁舎等の公共施設への導入が進展している。一方、協会では地中熱の認知度を高めるための広報活動に力を入れるとともに、技術者の育成のために地中熱講座と施工の品質確保のための技術者資格制度の活用で、普及促進に取り組んでいく。さらに、地域団体を含め会員数を増やすことで地中熱のプレーヤーを増やすことの取組も進めている。

このようにして当面の普及拡大を図っていくことをロードマップに記載しているが、2020年以降の10年間に再生可能エネルギー熱利用の10%に届くようにするには、これらの取組だけでは十分ではない。現在ようやく端緒についているZEB、ZEHの中に地中熱を導入する取組を本格的に行うのが2020年代であり、さらに地中熱のインフラ化についての取組も必要となる。制度面ではさらなる導入促進策として諸外国に見られるような地中熱を含む再生可能エネルギー熱利用の導入義務化や、現在民間資格である地中熱施工管理技術者の国家資格化などを検討すべきと考えている。これらの取組と併せ、地中熱利用を大きく普及させるには、導入コストの大幅な低減も欠かすことのできない要素である。量産効果と技術の習熟によるコスト削減は、このロードマップに織り込んでいる。

 

ロードマップでは縦軸側に国と自治体の政策を、横軸側に地中熱利用促進協会と地域団体の活動を配置し、中央に地中熱ヒートポンプの普及拡大を表現した。それぞれについてキーワードを用いて表現してある。それらロードマップに掲載した事項については、説明書にまとめて記載した。それぞれの事項についてのデータは特に記述がない場合は、ロードマップを発表した2017年6月7日時点のものである。また、それぞれの事項の説明は、ロードマップを理解するに必要最小限の内容にとどめてある。エネルギー基本計画などの国の基本政策の説明においては、地中熱に関連する部分の引用に限定しており、政策全体の解説は行っていない旨ご了解いただきたい。

2017年8月
NPO法人地中熱利用促進協会
理事長 笹田政克

地中熱普及拡大 中長期ロード マップ(PDFファイル 234KB)   説明書(PDFファイ ル 260KB)