特定非営利活動法人(NPO法人) 地中熱利用促進協会
第1回 東北地域支部会 地中熱利用ヒートポンプ講演会・交流会
三菱マテリアルテクノ株式会社
ドリリング部 クリーンエネルギーグループ
主任 石上 孝
平成19年3月23日(金),シャインプラザ平安閣秋田にて第1回 東北地域支部会 地中熱利用ヒートポンプ講演会が開催されました。13:00からの技術講演会には約100名のご参加を戴き,17:00からの交流会には約50名よりご参会戴きました。初めての試みであったにも関わらず,特に地元秋田の方々から多数ご参加戴きましたことに深く感謝申し上げます。以下に,講演内容と交流会の状況について,簡単にご報告させて戴きます。
講演題目1「地中熱利用のための基礎技術」
森谷 祐一 先生 国立大学法人 東北大学大学院 講師
地中熱利用の概要として,地中熱の特徴や利用例,熱の伝わり方の基礎知識等について,一般の方々にも理解し易い,大変ご丁寧なご講演を戴きました。また,地中熱利用のための基礎技術例の紹介として,地層の熱特性評価法や地下水流動,熱移動の評価についてご講演戴き,後半には現在研究室で取り組まれている数値シミュレーションの結果紹介もあり,大変興味深いものでした。
講演題目2「秋田市立山王中学校の建物基礎杭を用いた地中熱利用冷暖房システム」
秋田市立山王中学校に導入された建物基礎杭を利用した地中熱利用冷暖房システムについて,基本設計,実施設計,施工,運転実績値評価の順にご講演を戴きました。基本設計時にはサーマルレスポンス試験により地下熱物性値と設計地中熱交換量の算出を行い,これらの値を基に実施設計で地中熱源容量(杭深度50m×75本),地中熱源ヒートポンプ選定(60HP),蓄熱槽選定(140m3)等が行われ,施工に至ったとのことでした。
また,地中熱利用システムに関する運転実績値は,設計値をすべて満足しており,ランニングコストおよび環境負荷の低減効果も大きいとのことでした。なお,従来型システム(灯油焚き温水ボイラー+灯油焚きヒートポンプ)に対するイニシャルコスト増額分回収年数は,近年の灯油の高騰や運転方法の改善により約9年に短縮可能なようです。
講演題目3「地中熱交換器の熱抽出特性に関する数値シミュレーション」
U字管型熱交換器(シングルU字管方式,ダブルU字管方式,トリプルU字管方式)と同軸管型熱交換器(逆循環方式,順循環方式)の熱抽出特性について,数値計算結果よりご講演を戴きました。U字管型熱交換器では,流量,管径,管材質の熱伝導率が大きいほど抽熱量が大きくなり,トリプルU字管で抽熱量が最も大きくなるものの,流量が少ない場合にはトリプルU字管の抽熱量がダブルU字管のそれより劣る場合があるという結果に驚きました。
また,同軸管型熱交換器では,流量が大きいほど抽熱量が大きくなり,熱交換器が長い場合あるいは地層の温度が高い場合に,内管材質の違いが抽熱量に及ぼす影響がより大きくなるとのことでした。
講演題目4「個人住宅への地中熱システム導入の実例と課題」
既に秋田大学では,県内6ヵ所で地中熱利用の実験を行っており,これらの実験結果を基に,低イニシャルコスト(秋田方式の採用)で低ランニングコスト(深夜電力の利用−蓄熱,利用温度35℃以下)なシステム開発を目的に,ハイブリッドシステム住宅(ガス発電とのハイブリッド化,石油とのハイブリッド化)についてご講演を戴きました。
なお,今後の導入戦略と展望として,必要な技術・機器の低価格化,安定供給,メンテナンス保証を確立し,最適運転させることで,地中熱部分での追加設備コストを10年程度で回収できる商品として定着させるとのことでした。
講演題目5「不均一層への不飽和浸透と変温域形成・採熱」
採熱の促進を目的に,地表からの涵養(融雪水や雨水の大地浸透)に伴う垂直温度場の解析についてご講演を戴きました。結論として,(1)粘土層による閉塞や,層毎の不均一な飽和度形成を含む流れ場の解析が可能,(2)不均質飽和透水係数,空隙率,飽和度分布下での垂直方向大地温度場進展の解析が可能とのことでした。本題目のようなご講演は,これまで拝見したことがなかったため,大変勉強になりました。
交流会は約1時間という短い時間でしたが,地元秋田のみなさまに盛り上げていただき,大盛況のうちに終了することができました。交流会中にスピーチを頂戴いたしました,東北電力? 秋田支店 お客様本部 副支店長 三浦様,秋田市教育委員会 総務課 副参事 前田様,?花田設計事務所 顧問 花田様に深く感謝申し上げます。