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トルコのAntalyaで4月に開催されたWGC2005では地中熱利用に関しては4つのセッションが組まれていた。プログラム上では20件の発表が予定され、講演キャンセルがあった場合のために8件の講演がReserveされていた。テクニカルセッションの数は合計で60(5セッション並列)であったから、地中熱に関する発表が全講演数に占める割合は1/15である。しかし、地域冷暖房や野菜栽培のための温室への利用などは別のセッションだったので、地熱の直接利用に関してはこの倍くらいの発表数があったのではないかと思う。このうち私が聴くことが出来て印象に残った幾つかの発表について報告したい。
最初に発表したCurtis氏は地中熱を利用した住宅用ヒートポンプシステムの世界における普及状況についてのレビューを行った。地中熱といっても図1にあるようにcloseなタイプとopenなタイプがあり、後者は地下水だけでなく、川や湖などの地表水を利用するものである。表1に示すように米国60万、スウェーデン20万など、北米、北欧が多いが、ドイツ、スイス、オーストラリアでも普及が加速している。図2にはドイツにおけるヒートポンプシステムの普及状況が示されている。2002年で地中熱ヒートポンプシステムが全ヒートポンプシステム設置台数の80%を占めているのがわかる。スイスでは1/3の新築住宅がこの暖房システムを設置している。暖房における二酸化炭素を50%削減することができ、地熱利用ヒートポンプはソーラー、バイオマスと共に最も期待できる再生可能なエネルギーであると結論付けている。
日本特有の問題点として1m当りの掘削コストが2万円におよぶことが挙げられるが、秋田県の大潟村、鷹巣で実施された深さ4m程度の坑井による熱抽出実験では価格が$3,600程度で設置可能であり、商業ベースに乗る可能性が示唆された。産総研盛田氏は青森におけるGaia融雪システムの紹介し、電熱による融雪に比べ12%程度の電力消費ですむことを実証した。聴衆は青森の降雪量の多さに一様に驚いていたようである。地中海沿岸地方(スペイン)における地中熱源型ヒートポンプと大気熱源型ヒートポンプとを比較し、地域的な条件がかなり支配的であるが、地温熱源型ヒートポンプのCOPは30%程度の改善が期待できると報告があった。Rybach氏は中国で開発された一本の井戸で地下水を揚水し、熱交換した後還元するシステムを紹介していた(図3)。日本では以前山形大学工学部で地下水をくみ上げ直接熱交換することにより多量の熱量を採取するシステムを開発し、融雪等に利用したが、地下水の還元に際して地層の目詰まりが原因で実用化には至らなかったと聞いている。このあたりの問題がどうなのか気になるところである。

クローズドループ型 |

オープンループ型
図1.クローズドループ型とオープンループ型地中熱利用ヒートポンプシステム |
(Curtis et al., Ground Source Heat Pumps - Geothermal Energy for Anyone, Anywhere: Current Worldwide Activity,Proceedings of WGC2005 による)
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表1.世界における地中熱利用ヒートポンプの普及状況
| Country |
Mwt |
GWh/yr |
Number installd |
| Austria |
275 |
370 |
23,000 |
| Canada |
435 |
300 |
36,000 |
| Germany |
560 |
840 |
40,000 |
| Sweden |
2,000 |
8,000 |
200,000 |
| Swizerland |
440 |
660 |
25,000 |
| USA |
6,300 |
6,300 |
600,000 |
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(Curtis et al., Ground Source Heat Pumps - Geothermal Energy for Anyone, Anywhere: Current Worldwide Activity,Proceedings of WGC2005 による)
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図2.ドイツにおけるヒートポンプの普及状況 |
(Curtis et al., Ground Source Heat Pumps - Geothermal Energy for Anyone, Anywhere: Current Worldwide Activity,Proceedings of WGC2005 による)
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図3 単一井による地下水揚水・還元型の地中熱利用システム.下部
の地層から地下水を揚水し、熱交換したあと上部の地層に還元している.
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ルーマニアのメタンを含む鉱泉利用では、地中熱と回収されたメタンの同時利用が報告された。東北大の新堀氏は地下水流速が0.1mm/sある大町でのBHEへの集熱量が209W/mあり、地下水流が抽熱量に与える影響の大きさを実証した。スイスからは、BHEによる長期にわたる抽熱量変化を評価するため、有限要素による熱伝導解析を実施し、100mx6本の井戸を用いた場合の100年間の抽熱シミュレーションを行なったという紹介があった。現場におけるサーマルレスポンステストについての報告があり、十分長いテスト時間をかければ、線熱源法に基づく理論で十分である旨の発表があった。その他、マケドニアにおけるグリーンハウスへの地熱利用例の報告があった。
スイスでの大規模な地層への蓄熱テストに関する報告で、山岳地帯に位置するチューリッヒのホテルの改修にあわせて25万立方メートルの地層体積による1GWhの蓄熱が計画されている。これに関する有限要素コードFRACTureを用いた抽熱量予測や環境影響調査が報告された。新潟および秋田県での廃棄された地熱井などを利用したBHEによる抽熱実験と数値シミュレーションを行い、500mの井戸で同軸熱交換器を挿入して100kWtの抽熱を実証した。香港における、ヒートアイランド緩和のためUチューブによる冷房のための地熱利用が数値シミュレーションにより評価され、冬季に暖房、夏場に冷房の運転が、冷房のみの運転より効率が高いことが示された。南ポーランドマロポルスカ地方での地熱発電と直接利用の可能性について、地質、水文学的に議論され、事業化の可能性が示唆された。
地下水流速計の開発と地下水流速が集熱量に及ぼす影響が議論され、抽熱量が地下水流速の関数であることが示された。その他、東シベリアにおける地中熱ヒートポンプの利用、IZTECH(イズミール工科大学)における地中熱利用に関する概念設計、スペイン、チリ、アルゼンチンにおける地中熱利用の試みについての報告があった。
世界的に地中熱の利用は着実に伸びているという印象を強くした。気温、地温、地層の有効熱伝導率、掘削コストなど地域により異なるので、その地域に合ったシステムの開発・普及が重要であろう。
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