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・H17.12シンポジウム 地中熱利用HPとは
株式会社地熱 社長 浜田眞之

1.はじめに
 地中熱利用ヒートポンプの説明をする時に、いつもどうやったら上手に分かって貰えるのかと悩みます。ですから本当はヒートポンプメーカーの方にでも説明して頂くのが良いのだろうと思っていました。ところが、専門家の話を子供のような気持ちで聞くと、何かしっくり来ない。どうもこれは専門知識の問題とは少し違うのだろう。感覚的に納得できる説明がないものだろうか、それを意識しつつ説明いたします。
 ここでは、まず、ヒートポンプそのものについて説明します。
 つぎに、いろんな種類があるヒートポンプのひとつである地中熱利用ヒートポンプの特徴について述べます。

2.ヒートポンプとは
2.1 ヒートポンプにはエネルギーが必要なこと

 ヒートポンプとは皆さまのおうちにあるルームクーラーや冷蔵庫と同種類の機械です。
 ヒートポンプという名前からお分かりになるように、これはポンプの類推から付けられた名前です。ポンプは何をする機械でしょうか。そうです。水を汲み上げる機械です。どういう風に汲み上げるのでしょうか。低いところから高いところへと水を移動させる機械です。そして、このヒートポンプも熱を低いところから高いところへと運搬する作業をする機械なのです。
 ではどうやって熱を低いところから高いところへと動かすのか?これを熱力学と言う学問で、数式で綺麗に説明することもできますが、ここでは中学校程度の数学しか使わないように、できれば一切使わないようにして、ヒートポンプを説明します。
遊園地のジェットコースターはぐるっと一回りして元の位置に戻ってきます。スタート地点からゆっくりと高いところに引き上げられて、そこから勢いを付けて急転直下に逆落としされます。この高い位置にはゴットンゴットンと引っ張っているのが実感できると思います。
 途中の谷あり山ありで坂を上らない訳ではありませんが、結局最初の位置より低いところで止まります。簡単に言うと、ものは何か力を加えずに低いところから高いところに行くことはないということです。
 同じように熱も勝手に低いところから高いところに行くことはありません。
 例えば60℃と30℃のお湯を同じ大きさの別々の浴槽に満たしておいて、この浴槽をパイプで繋いでお湯が行き来できるようにしておくと、どうなるでしょう。30℃の浴槽から熱が60℃の浴槽の方に移動して、65℃や70℃のお湯になるということは決してありません。普通60℃の方から段々と熱が移動して、30℃の浴槽が段々暖まって45℃くらいになって、60℃の方が45℃くらいに下がっていきます。つまり熱は温度の高い方から低い方にしか移動しません。これは我々の体験に照らして納得できます。
 ヒートポンプというのはポンプのように水を低いところから高いところに上げるように熱を温度の低い方から高い方に上げるという機械です。ジェットコースターを何らかの動力を使って高い位置に持ち上げるのと同じように、ヒートポンプでも何らかのエネルギーが必要です。
 ヒートポンプは熱を低いところから高いところに上げる機械ですが、外からエネルギー頂いて初めて動くのです。これは外からエネルギーを与えずとも動き続ける夢の永久機関ではないのです。

2.2 熱を汲み上げる原理
 山の上など高いところに行かない限り、水は0℃で凍り、100℃で沸騰します。
 ですから常温では水は液体です。御存知のように水を火に掛けて、100℃になると沸騰し始めて、暫くは温度は100℃のままです。100℃の蒸気になるのには100℃のお湯よりずっと大きな熱が必要で、これを蒸発潜熱と言います。要するに99℃のお湯を100℃にするには1グラムあたり1カロリーが必要ですが、なんと100℃の蒸気にするには540カロリーものエネルギーが必要です。
 ここで近頃使われているジュールという単位を用いませんでしたが、これは敢えて分かりやすさのためにカロリーで話をします。
 水が蒸気になる、液体から気体になる時は蒸発潜熱と言って、外から熱を加えることが必要でしたが、逆に気体から液体になる時には、凝縮潜熱といって、熱を放出します。
 また水が氷に変化する時も、同じように大きな熱の出入りがあります。固体から液体になる時には融解潜熱と言って、外からの熱を必要とし、その逆の液体から固体になる時には凝固潜熱と言って、熱を放出します。
 こういう液体から気体へ、気体から液体へといった変化は水に限りません。またその時に熱を放出したり、熱を吸収したりという作用も水だけではありません。
 空気の約80%を占める窒素は通常気体ですが、上手に温度を下げてやると−196℃の液体になります。つまり0度よりずっと低い温度で沸騰する訳です。
 こういう気体は他にもあります。1気圧の時、アンモニアは−33℃、エタンは−77.5℃で液体になります。
 こういう物質は水よりも遙かに低い温度で蒸発して、その時に大量の熱を周囲から奪います。するとその蒸発した気体は熱の運び屋になる資格がある訳です。この性質を利用してヒートポンプを作ります。この熱の運び屋を冷媒と言います。
 以前はこの冷媒にフロンが使われていていましたが、オゾン層の破壊するために使われなくなっています。
 液体から気体になる温度を沸点と言います。水は普通100℃なのですが、山に行けば95℃くらいで沸騰します。気圧が低いと沸点は低く、気圧が高いと沸点は高くなります。つまり沸点はそこに掛かる圧力で変化するということです。
 仮にこういう冷媒があると仮定してください。
 1気圧の時にマイナス50℃でやっと液体になるとします。これを容器に入れておけば通常は気体ですが、これに圧力を掛けると、沸点はどんどん高くなります。仮に常温で10気圧の圧力が掛かった容器に入れた冷媒が液体になっていたとします。この容器にバルブの付いた管を付けて、バルブを一気に開けてやると、液体は気体になります。その時に管の周囲には水滴や霜が付くはずです。
 管の周囲の水は、空気中の水分が急激に熱を奪われて気体(水蒸気)で居られなくなったものです。このように冷媒は蒸発する時に周囲の熱を奪います。
 一旦気体になった冷媒を別の容器に導いて、これに圧力を掛けていくと次第に気体から液体に戻ります。するとこの液体を減圧すれば、また気体になるときに時に周囲から熱を奪うことができます。これが冷蔵庫やクーラーの原理です。

2.3 ヒートポンプの道具立て
 おさらいをしますと、冷媒という常温よりも遙かに低い温度で沸騰する物質があることが分かりました。これが蒸発する時に周囲から熱を奪いますが、この蒸発した気体に圧力を掛けるとまた液体に戻ります。その時には凝縮潜熱といって逆に熱を放出します。これを上手に使って空間を冷やしたり温めたりできないか、別の言葉で言えば冷房や暖房が出来ないかということになります。
新エネルギー産業技術総合開発機構の「地中熱利用ヒートポンプシステムの特徴と課題」という資料に掲載されている図面で説明します。


2.3.1 蒸発器
 先ず蒸発器というものを見てください。これは冷媒が蒸発するところです。この時に周囲から大量の熱を奪います。この時に圧力が低いと、蒸発しやすくなります。

2.3.2 圧縮器・コンプレッサ
 この気体となった冷媒に圧力を掛けてやります。これを圧縮機、コンプレッサと呼びます。この圧縮機にエネルギー(通常電力)が消費されます。こうして圧力を掛けられて高温・高圧になった気体が出来ます。

2.3.3 凝縮器

 冷媒は1気圧では零下何十度でないと液化しませんが、圧縮されて高温高圧の状態の冷媒は少し冷やしてやれば液体になりやすい性質を持っています。そこでここを何らかの格好で冷やしてやれば液体になります。それほど低温でない水で冷やしてやったり、あるいは送風機を当ててやれば液体に戻ります。この時に冷媒は凝縮潜熱という熱を大量に放出します。逆に言えば、その時水や空気を暖めることになります。

2.3.4 膨張弁
 さてこの液体となった冷媒を今度は蒸発する状態に持っていけば、このサイクルは完成です。これを膨張弁というもので行います。膨張弁とは圧力の高温高圧の凝縮器と低温低圧の蒸発器の間の関門のようなもので、膨張弁の狭い隙間をくぐり抜けると、一部が液体から気体に変化するので、その時の気化熱で周囲の液体を冷やします。そのため今まで暖かかった冷媒の温度が下がって蒸発器に元の状態で戻ってきます。
 この膨張弁で生じている現象を断熱膨張というのですが、熱力学の用語による説明を禁じ手にしていますので、ここで止めておきます。

2.4 冷房サイクル
 図の下にある冷房サイクルで説明します。

1)蒸発器
 蒸発器を見てください。ここで低温低圧の冷媒が気化する時に大量の熱を周囲から奪います。つまり周りを冷やすということです。ここに水を通せば冷水ができて、それを使って室内を冷やすことができます。ここでは15℃の冷水が10℃に冷やされるように書かれています。

2)コンプレッサ
 気体となった冷媒はコンプレッサで圧縮されます。通常は、ここで電力が圧縮エネルギーとして消費されます。

3)凝縮器
 圧縮された冷媒は高圧になり温度も上がり、比較的高い温度で液体になりやすい状態になります。ここでは25℃の水で冷やして液化しています。ただし、この冷却を40℃の空気で行う場合には凝縮器からは60℃といった高温の空気が排出されることになります。夏の夜に盛り場を歩くと、エアコンの室外機がむっとするような外気を出していますが、これが原因です。熱を暑い日本の夏に排出するには40℃では足りずにもっと高温にしないと放熱できません。これが盛り場だけでなく事務所からもマンションからも住宅からも出てくれば、都心は一層暑くなり、ヒートアイランドの原因を作ることになります。

4)膨張弁
 最後に関門のような膨張弁を潜ると、急激に圧力が下がり、液体の一部が気化しますが、熱の出入りがない状態での変化なので、その回りの液体を冷やす働きをして、冷媒の温度を下げます。ここでは35℃から5℃に温度が下がるように表現されています。

2.5 暖房サイクル
 今度は逆に暖房のサイクル(上の図)を考えて見ましょう。
 凝縮器と蒸発器の場所を入れ替え、暖房できるようにするためには機械の配置を反対にしなければならないのですが、実際にはヒートポンプには四方弁というのが付いていて冷媒の動きを反対にすることが出来ます。

1)凝縮器
 どこから説明を初めても良いのですが、暖房サイクルですから、部屋を暖めるところから始めます。
 先ず高温高圧になった冷媒が気体の状態で凝縮器に入ってきます。ここでは室内から戻ってきた30℃の水が、35℃の温水に暖められて、部屋に戻っています。こうして凝縮器の中の冷媒は冷やされて液体になります。

2)膨張弁
  この冷やされて液化した冷媒は膨張弁を通り、低温低圧になり、急激に圧力が下がり、液体の一部が気化します。同時にその回りの液体を冷やして、冷媒の温度を下げます。ここでは40℃から0℃に温度が下がるように表現されています。

3)蒸発器
 次はこの冷媒に熱を加えて蒸発させれば良いわけです。この図では10℃の水から熱を得ています。これを0℃近い冬の空気から熱を得ようとした場合、効率が悪くなるのはお分かりでしょう。北海道などでエアコンが使われないのは夏の冷房が要らないこともありますが、冬のマイナス何度という寒い空気ではこの蒸発器に充分な熱を与えられいので、効率が落ちるためです。取りあえず暖かい地方なら、外気によってこの蒸発器で冷媒が蒸発するだけの熱を得ることができます。

4)圧縮機
 気体となった冷媒は圧縮機で圧縮されます。これには通常電力がエネルギーとして消費されます。ただし冷房と違って、圧縮機が消費した分の熱も暖房には使われるので、ヒートポンプの効率は実は暖房の方が冷房よりも高いことになります。
 一つだけ式を使いますと、冷凍機の成績係数は

成績係数(COP)= 蒸発器で奪ってくる熱量(kcal/h)

圧縮機に要する電気量(kW)×860(kcal/kW ・h)

 
 ここの860というのはワットをカロリーに換算する係数を思ってください。
 圧縮で投入したエネルギーよりも多く蒸発器で熱を奪ってくるから、得をする訳です。この数字が大きければ大きいほどお得となります。
 これを暖房運転で計算しますと、

成績係数(COP)= 凝縮器で吐き出す熱量(kcal/h)

圧縮機に要する電気量(kW)×860(kcal/kW ・h)

 となりますが、これは上の分子に圧縮機のエネルギーもそのまま入ってきますので、冷媒の凝縮温度やと蒸発温度が同じであれば、ヒートポンプの成績係数は暖房運転の方が冷凍機である場合より丁度1だけ大きいことになります。

3.地中熱利用ヒートポンプとは
 さてようやくここまで辿り着きました。エアコンと呼ばれる空気熱源のヒートポンプとの違いはどこかといいますと、室外側で空気で暖めたり冷やしたりするのではなく、地下に掘削した井戸に通したパイプ内を循環する別の媒体だということです。
 これは水でも良いのですが、不凍液が一般に用いられています。エチレングリコールやプロピレングリコール、酢酸カリウムなどがあります。
 この媒体が循環してきて、ヒートポンプの中で熱交換をします。
 例えば冷房運転の時にはこの媒体が凝縮器の冷媒を冷やす働きをします。この媒体自身は暖められて地下に戻り地下で放熱してまた温度を下げて戻ってくることになります。
 地下に放熱すると井戸の孔の付近の地下も暖まりますが、その更に周辺とは温度差があるので、一定の幅に納まります。この循環によって凝縮器を冷やす仕組みです。
 気候の影響を受けない地表より数メートル以深の地下は土地の平均気温程度の温度なので、効率が良くなります。
 逆に暖房運転の場合には、媒体は蒸発器に熱を与える役目をします。そのため地下に戻る媒体の温度は下がりますが、先ほどと同じ理屈で一定範囲に収まります。
 地中熱利用ヒートポンプといわゆるエアコンとの最大の違いは、冷媒と熱交換をする媒体が空気ではなく、地下を循環している別の媒体であるということです。
 この地下での熱交換をする方式としても幾つかありますが、ここでは割愛します。
 またエアコンと違って、ヒートポンプで上げたり下げたりした熱をいきなり室内に送風するシステムではなく、一旦タンクに貯めた水で冷暖房をする方式であることも設備上の違いとしてあげられますが、これも割愛します。
 そして地下を循環する媒体であるために、効率が上がるというメリットがある一方で、掘削コストも上がってしまうという欠点を持っています。
 但し、夏に地下に放熱し、冬に地下から採熱するため、地域によってはバランスが取れる可能性があります。また夏の冷房負荷が大きい時には、それを温水を作ることに回せば、夏冬のバランスを調整することも可能です。この場合は、温水造成が夏用と冬用で二重投資になる可能性があります。

 

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