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・札幌地区地中熱利用ヒートポンプシステム施設見学会
2007年1月18日札幌地区地中熱利用ヒートポンプシステム施設見学会参加記
日本地下水開発株式会社
遠藤真哉

 地中熱利用ヒートポンプシステム施設の見学会を平成19年1月18日に札幌市で実施した.以下はその時の記録である.

 参加者は16名であった.

 11時20分千歳空港到着出口に集合し,最初の見学地である「えこりん村」(住所:恵庭市牧場)へ向かった.千歳ICから道央道で移動したが,当日の天候は小雪混じりの雲天で午前12時時点の高速道路上の気温表示はマイナス1.7℃であった.道央道恵庭ICに隣接して位置するえこりん村に到着後,最初の見学対象でもあるガーデン風「びっくりドンキー」天満食堂にて昼食を済ませた.外の寒さを感じさせない地中熱利用の暖房をさっそく実感することが出来た.


写真1
天満食堂(右端部に機械室)と地中熱交換井配置箇所

 天満食堂の地中熱に関して施工したオリエントジオサービス社から説明を受けた.えこりん村は2006年4月に,「環境負荷の軽減,持続可能な社会の形成」をテーマにオープンさせたコミュニティで,アレフグループ独自の環境行動計画のひとつとして,地中熱利用を導入したとのことであった.なお,株式会社アレフは「びっくりドンキー」などのレストランチェーンを全国約300店舗を擁する会社で,アレフグループとして取り組んでいるテーマが「農業と環境と文化」で,えこりん村はそれらの実践の場であり情報発信の場でもあった.

 株式会社アレフが設計・施工した地中熱ヒートポンプシステムは,今回見学させていただいた「えこりん村」の天満食堂と花の牧場のほか同村らくだ軒,その他3店舗・1工場と多くの実績を有しているとのことであった.

 天満食堂の冷暖房に用いる地中熱ヒートポンプシステムは以下の通りであった.

熱交換井: 深度100m×13本を概ね6m間隔で配置
熱交換器: シングルU字管・25A・PE−100(イノアック社)
熱媒: エチレングリコール25%(ショーワ社)
HPユニット: 30ps(ゼネラルヒートポンプ工業社)
地質: 深度0-5m 粗粒砂・火山灰
5-73m 熔結凝灰岩
73-100m 粗粒砂・泥炭

地下水は豊富で水位GL-5m(この周辺では300〜400L/min揚水出来る,スクリーン深度GL-60〜70m)水温8〜9℃ 熱伝導率1.7〜1.8

 熱交換井の掘削は,トラック搭載トップドライブ式(φ114mm)と高周波バイブロ式(φ179mm)を併用したが,この地点ではトップドライブ式が効率的であったとのことであった.地下水が豊富なため坑壁が崩壊する地質での掘削や熱交換器挿入などの施工性を改善する工夫が行われた様で,最終的にはトップドライブ式で100mを1日で仕上たとのことであった.トラック搭載トップドライブ式掘削はスイスの技術を導入したもので,最適な掘削口径や熱交換器(シングルU字チューブを用いる事)の選定や熱交換器周囲の充填方法(当初セメントミルク注入で行っていたが裸孔とした事)を試行錯誤し,既述の方法に落ち着き工期短縮にも貢献したとの事である.


写真2
トラック搭載トップドライブ式(エアー ロータリー パーカッション掘削工法)

 次に,天満食堂に併設された機械室内部を見学した.


写真3
HPユニットとヘッダー部

 当日営業をしていないため見学のメニューには無かったが,オリエントジオサービス社のご厚意により,同村で導入されている地中熱ヒートポンプシステムの3カ所の内の一つである「花の牧場」に,移動し説明を受けた.


写真4
花の牧場」レンガの建物の手前側が機械室で柵の内部に地中熱交換井を配置

 花の牧場は,温室などの冷暖房に地中熱ヒートポンプを導入しており,地中熱ヒートポンプシステムは以下の通りであった.

熱交換井:
深度100m×25本を格子状に配置(概ね5m×5m)
熱交換器:
シングルU字管・25A・PE−100(イノアック社)
熱媒:
エチレングリコール25%(ショーワ社)
HPユニット:
60ps(ゼネラルヒートポンプ工業社)
地質:
深度0-20m 礫・砂礫
20-80m 熔結凝灰岩
80-100m 粗粒砂・泥炭・腐植土

 この地点の熱交換井の掘削および熱交換器の設置は,1〜1.5日で行えたとのことであった.

 次の見学箇所へは道央道経由札幌新道を移動し新川ICで降り,北海道計器工業(株)社屋(住所:北海道札幌市西区発寒14条13丁目2番12号)に14時20分到着した.さっそく同社会議室で中田様より説明を受け,北海道計器工業(株)では,世界的に「地球温暖化問題」が叫ばれていることに対応し,新社屋建設の機会に自然エネルギーの一つである地中熱を利用する空調システムを導入したとのことであった.説明後質疑応答が行われ,地中熱交換井等を施工した株式会社日伸テクノからも説明をいただいた.導入された地中熱ヒートポンプ暖冷房システムの概要は,以下の通りであった.

地中熱用途:
1階エントランスホール90m2,
2階本館1,367m2  の暖冷房
地中熱採熱工法:
ボアホールU字管埋設工法
地中熱交換器:
ポリエチレン製Uチューブ95m 珪砂充填
熱交換器本数:
95m×11本×2回路(22本,5m間隔)
ヒートポンプ:
ゼネラルヒートポンプ工業社製 45馬力(15馬力×3台)
暖房COP 3.3 冷房COP  4.7
放熱設備:
ファンコイルユニット39台
温水パネルヒーター10台
床暖房 90m2
地質:
泥炭・砂
帯水層は何枚かありそう(地下水の流速はかなりありそう)
地中部計測:
4井にT型熱電対を多点に設置
計測:
北電グループの北電総合設計株式会社と共同研究を実施中でリアルタイムでデータを取得中(熱源部・冷温部・タンク温度・暖冷部・地中部温度・電力・外気温・室温)

 その後,実際の地中熱ヒートポンプシステムを見学した.館内の壁面に地中熱ヒートポンプシステムの説明資料がパネルで掲示されていると共に,システム全体の温度計測状況もリアルタイム示されていた.


写真5
館内に設置されたシステムの運転状況の内の地中部温度(深度25m5.9℃ 42m5.4℃ 75m7.5℃同時の採熱部からHPへ入り温度5.4℃ HPから戻り温度4.3℃:364L/min)

その後機械室を見学した.


写真6
地中熱源ヒートポンプ45HP THP−1

 更に館内を案内していただき,暖房や床暖房が有効に機能していることを体感することが出来た.また,普段各家庭や会社に設置されているものの目にする機会の少ない電力計の構造や検定状況(7年使用後回収され検定後設置されることを初めて知った者が殆どであった)を見ることが出来て貴重な体験となった.余談であるが,ブレーカーが落ちた直後はスイッチが戻らない現象となるが,これはブレーカーの構造が過電力でバイメタルが発熱し切れるので,冷えるまで待つのがノウハウである事を教えていただいた.
 見学させていただいた建物は,地中熱を利用した建物としては北海道最大規模との情報もあるとのことであった.現在も継続して北電グループによるデータ収集が行われているとのことであった.

 その後最終見学地である,北海道大学(住所:北海道札幌市北区北13条西8丁目)に16時00分到着した.見学箇所は北海道大学正門を西に直進して突き当たる農学部本館右側の改修工事中の建物に接続する段差解消スロープであった.対象建物の1F床が地上から約2mの高さにありバリヤフリーで入る事ができる.この工事は,北海道大学環境資源バイオサイエンス研究棟改修工事として大成建設・伊藤組土建建設共同企業体がPFI方式で受注し施工中とのことで同共同企業体より説明を受けた.説明には採熱交換井等の施工を担当した,株式会社日伸テクノからも補足説明がなされた.スロープは勾配1/15で2回折り返して建物に入るが,屋根などは無く完全に外にあり融雪のための地中熱ロードヒーティングシステムが導入された.


写真7
地中熱ロードヒーティング稼働状況,融雪し一部乾燥している箇所も見られた

 導入された地中熱ヒートポンプロードヒーティングシステムの概要は,以下の通りであった.

熱交換井:
深度100m×4本を5m間隔で格子状に配置(2系統)
熱交換器:
シングルU字管・PE−25A
地下水位以下は掘削土充填 地下水位以上は珪砂埋め戻し
HPユニット:
暖房能力10.0kW COP3.7
(採熱温度0℃,暖房温度35℃の時)
2台(サンポット株式会社)

地中熱ロードヒーティングシステムの熱量計算
RH敷設面積:
71.61
融雪単位負荷:
250W/m2
システム合計負荷:
71.61m2×0.25kW/m=17.9kW
設置HP能力:
10kW×2台=20kW(0℃〜35℃)
熱応答試験結果における推定採熱量:64.7W/m×100m×2本(1台)=12.94kW
HP必要採熱量(1台あたり):機器能力10kW─消費電力3.05kW=6.95kW
地下水位:
GL−4〜5m
RHシステム:
熱交換器の採熱温度≒0℃
同  戻り温度≒−3℃
HP 出口温度≒35℃
同  戻り温度≒20℃
RH 送水温度≒35℃
同  出口温度≒20℃

 その後機械室を見学した後,解散地点のJR 札幌駅で見学会を終了解散した.


写真8
地中熱ヒートポンプ GSHP−1,2

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